繊細すぎるあなたへ〜HSPでも楽に生きられるようになったわけ

Published on: 08/31/2019 | Last updated: 09/16/2024

こどもの頃から目に見えないものが見えるタイプの人に会うたび「そんなに繊細だったら生きるのたいへんでしょう」と同情されていたわたし。

ボディートークの創始者であるジョン・ヴェルトハイム博士のセッションを初めて受けたときも真っ先に指摘されたのは「Highly sensitive(感受性が強い)」という点でした。

最近ではHSP(Highly Sensitive Person)という言葉を耳にする機会も増えてきましたね。

生まれつきさまざまな刺激にきわめて敏感に反応するため、社会生活において生きづらさを感じやすい人たちのことです。

ハイリー・センシティブ・”パーソン”と呼ばれますが、動物にもこのような性質を帯びた個体は存在し、飼い主以外の人間をやたらと怖がる、ちょっとした刺激に反応して怯えたり攻撃的になるという場合はこれに当てはまる可能性があります。

一般的な感覚で生きている人から見ると、HSPの人や動物は「神経質」「気にしすぎ」ですまされがちです。

でも彼らは同じ量の刺激に対して過剰に反応しているわけではありません。

そもそも感覚器官の感度が高く、周囲の環境から受け取る情報の量がふつうの人よりもはるかに多いからこそ、影響されすぎてしまうのです。

神経システムがそれだけ高度に発達しているためで、こうした生まれもった特性を変えることは困難とされています。

ただし、これらの膨大な感覚データの処理の仕方や感情的反応のありようを調整することは実は可能です。

実際にわたしはボディートークを受けるようになってから、感受性の高さを強みとして活かしつつも、日常生活でマイナスの影響を感じることはほとんどなくなりました。

キーワードは“フィルタリング”。

通常、人や動物の脳には自分の生存にとって重要度の低い情報をあらかじめ除外して入ってこないようにするフィルタリング機能が備わっています。

周囲の情報をすべて無作為に取り込んでいたらデータが多すぎて処理が追いつかなくなってしまうからです。

HSPの人はこのフィルターがうまく機能していないので自分には直接関係のない情報まで取り込んでしまい、感情的に振り回されやすかったり、つねに大量の情報を処理しつづけているため脳がフル回転していてリラックスしにくい、疲れやすい、ひとつのことに集中しにくいといった傾向があります。

なぜこうなるのでしょうか?

その原因は脳が発達する胎児期にあります。

栄養状態をはじめとするさまざまな胎内環境の問題、妊娠中の母親が不安や恐れなどネガティブな感情を強く抱いていた、母親と身近な人(多くの場合は父親)との関係が険悪だったなどの環境的要因があると、胎児は生命の存続を脅かされ、身の周りのリスクを強く意識した状態をベースとして脳が形成されていくことになります。

例えばどんな危険が潜んでいるかわからないジャングルの奥深くをひとりで歩いていたら、周りで何が起きているかにふだんよりも敏感になりますよね。

ちょっとした物音がするたびにビクビクしたり、小鳥が羽ばたいただけで飛びあがって驚いたり。

危機が迫っている状況では警戒意識が高まり、防衛本能が強く働くため、ふだんなら気づきさえしないような些細なことまで察知し、感情的に反応してしまうものなのです。

HSPの神経回路ではこうした警戒状態がデフォルトとなっているため、つねにできるだけ多くの情報を取り込もうとするわけです。

ボディートークではこのフィルタリング機能を強化し最適化するために、さまざまな側面から調整を行います。

まずひとつにはそもそもの原因である胎児期の恐れや不安の記憶を解放すること。

この時期の記憶は顕在意識からはアクセスできないエリアに蓄積されているため従来の心理療法では対処できませんが、ボディートークなら無意識領域にアプローチできるテクニックによりこれが可能です。

さらにそうした胎児期の記憶によって脳のどの部分にどのようなアンバランスが生じているかを突き止め修正していきます。

これによりストレス反応(ストレス要因に対してどのように反応するか)のプログラミングをより適切なものに変えることができます。

また人間や動物には体の表面に気のバリアがあります。

外的影響から身を守るエネルギーの膜のようなもので中医学では“衛気(えき)”と呼ばれます。

これを強化するテクニックもボディートークには含まれています。

衛気は気候的要因やウイルス、電磁波といった物理的な要因だけでなく、他者の感情や雰囲気からも影響を受けすぎないように守ってくれます。

HSPは共感力が強いので、悲しんでいる人が近くにいるだけで直接関係のない自分もなぜか悲しくなって落ち込んでしまうとか、同じ部屋に怒っている人がいると自分が怒られているわけではないとわかっているのにやたらビクビクしたり動揺するという人も多いかと思います。

同じ空間にある他人の感情が皮膚から自分のなかに入り込んできてしまうからです。

このようにとくに触覚が過敏な人には衛気の強化は効果的です。

もちろん個人的に関わり合いのある相手に共鳴することは自然ですし、ポジティブなエネルギーであればプラスに作用するので、ここでもやはり鍵となるのはフィルタリング。

自分に関連する情報や有益な情報は取り込んで心身に統合し必要のない情報や有害な情報はブロックする。

この両面で衛気が役割を担っています。

そしてもうひとつ重要なのが心臓です。

というのもフィルタリングを可能にしているのは意識です。

意識というとひとりにひとつ、そのなかに顕在意識と潜在意識があるという認識が一般的なのではないでしょうか。

ところが実はひとつひとつの臓器や器官、さらには細胞一個一個にそれぞれ意識があり、それらすべてが連携して機能しているんです。

それら無数の意識を統括するのがハートブレイン、心臓の脳。

(参照→脳は3つある!? 頭と心と体を調和させて生きるために

ですから意識のフィルターを最適化するにはハートブレインが活性化していなければなりません。

またハートブレインは自分の心を守りつつ、周囲の環境とよりよい関係性を築いていくための知恵を宿す場所であるという意味でもポイントとなります。

ボディートークはハートブレインを含む3つの脳の調整ができる数少ない療法のうちのひとつだと思います。

ひとくちにHSPといってもひとりひとり繊細さの内容も程度もさまざまですし、それぞれに複合的な要因がからんでいるため、セッションでは上記の他にも個々の必要に応じていろんな角度から調整を行い、心と体が全体としてバランスよく機能する状態へと導いていきます。

結果、わたし自身がいちばん変化を実感しているのは、境界線が引けるようになったということです。

自分のテリトリーはつねに守られていて自分にとって安全なものにだけ扉を開く。

その開閉がうまくできるようになりました。

心理学用語ではバウンダリーと呼ばれますが、これって意識的に努力してもなかなかできないんですよね。

でもボディートークを繰り返し受けるうち、自然とできるようになっていました。

わたしの場合、とくに聴覚と触覚が敏感なタイプです。

例えば口を開けたまま食べるときの咀嚼音が本当にダメで、家族とも時間をずらしてひとりで食事をしたり、外食のときに近くのテーブルの人がクチャクチャしはじめたら気持ち悪くて食べるどころか吐きそうになるので、マナー違反とは知りつつもイヤホンで音楽をガンガンに鳴らしながらなんとか食べ物をのどに流し込んでいました。

いわゆる音嫌悪症(ミソフォニア)です。

それ以外にも不快な音というのはただのノイズではなく、突き刺さったりまとわりついてくるといった体感をともなって聞こえるので耐えられなかったのですが、今はこの現象もよっぽど疲れているとき以外は起きないので、苦手な音が聞こえてきても「気にせず他のことに集中しよう」と意図すればたいていシャットアウトできます。

触覚によって人の意識や感情を自動的に読み取ってしまう点はあいかわらずではありますが、以前のように町ですれ違っただけの人の悲しみが押し寄せてきて、わけもわからず涙が出てきてしまうようなことはもうありません。

いろいろ見えてしまってもそれらが侵食してくることはなく、透明なバリアに守られた安全な場所から冷静に観察している感じです。

なので人混みのなかにいると前はすぐにぐったりうんざりしていましたが、今は長時間になると少し疲れるかなという程度ですんでいます。

他にも満月のときに眠い、だるい、低気圧になると偏頭痛がひどいなど、自然現象の影響が悪い形で出ることもなくなりましたし、本当に生活のあらゆる面で楽になりました。

こうなってみると今と比べて以前は毎日あんなにたいへんでよく生き延びていたなあとしみじみ思います。

生まれもった特性は変えられなくても、それをどう使うかは変えられる。

過去の自分と同じような思いをしている人たちには、感受性の高さによるデメリットを軽減しつつ、メリットをよりよく活用する方法があることを知ってほしいです。

思えばわたしが今までにやってきたことすべて、HSPの特性があったからこそうまくいっているんですよね。

翻訳や通訳など語学系の仕事も、言葉や写真による表現も、エネルギーワークやアニマルコミュニケーションも。

ボディートークはそのなかでも最たるものと言えますが、施術者としては感受性が強くて情報を多く深く読み取れるだけではじゅうぶんではなく、ニュートラルな立場から観察できる能力が要となります。

クライアントさんの意識や感情に引きずられていたのでは効果的なセッションはできませんから。

このように境界線を引いてフィルタリングがうまくできるようになれば、繊細な感性を有意義に使える場面はさらに増えるのです。

HSPという特性は当事者以外には理解されにくく、マイノリティであるため生きづらさにつながりやすいですが、喜びや美しさなどポジティブな面にも深く感じ入ることができ、人一倍豊かで充実した人生を創造できる可能性をもっています。

ボディートークで生まれもった特性をプラスに転換すれば世界の見え方が一変するかもしれませんよ。

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